・・・一時

　真っ暗な闇の中、目が醒めた。
錘のような身体を、引きずるように起こして・・・時計で日付と時間を確認した。
夜明けにはまだ時間がある。
今日は、約束があるから・・・起きなきゃいけない。

　・・・買い物しなきゃ・・・。
今日の用意・・・年越しの用意・・・お正月の用意・・・。
　ふらふらしながら床や壁に手をかけて立ち上がり、ユニットバスへ向かう。
湯浴みでもすれば・・・少し、頭が覚醒すると思った。
何時もよりも、動きか緩慢だけど・・・行動は出来そうだ。
　簡易に食事を作り・・・必要な物を書き出し、覚醒しきってない頭で、お財布の中身と相談して・・・必要な物を用意しようと決めたら、思ったより時間が経過していた。

　近くの商店街で、買い物をして・・・残った時間は、ひたすら料理の仕込みをしてた。
・・・この分なら、間に合いそう。

少しだけ高鳴る胸の奥が、不安を掻き立てるけど
今は、ドキドキという鼓動が全てを消し去ってくれるから・・・
―――だから、何も怖くないの

　時間になって、真名が来て・・・しゃんめりーって言うのを飲まして貰って、けーきを一緒に食べて・・・日が高いうちに、仕込んだ御節を少し出した。
　それと一杯・・・お喋りした。
真名のこと、少し知れて良かった。一杯・・・嫌なこと聞いたかもしれないけど・・・でも、知りたかった。
枢は、真名に迷惑ばかりかけてる・・・だから、また『あの目』で見つめられた。

・・・似てるから・・・？

　枢と似てるなんて、きっと嫌がる。嫌われる・・・だから、言えない。
似てるから、好きなんじゃないよ。
真名が、枢をあの方と同じく・・・個として見てくれるから、好きなんだ。
枢にはない優しいさがある真名だからなんだ、と何度も思った。
　・・・真名が枢の部屋に泊まって行った。
言い出した時は、ちょっと吃驚したけど・・・嬉しかったよ。
・・・柔らかすぎて使い慣れないから、部屋にあったべっとは使ってなかったけど・・・役にたってよかった。
　・・・真名との関係は、書物の友達とは少し違う気がする。
あの方の好きとは、違う・・・ちょっと不思議な感じ・・・。
・・・傍に居れば、何時か解るかな？

・・・『友達以上恋人未満』・・・不思議な言葉だ。

　お正月は・・・残りの冬休みは、Biblioteca Grandeで・・・留守番だから、兄様と一緒だと思う。
　・・・お蕎麦を、打ってみようかな・・・。
かなり久しぶりだけど・・・できるかな。
・・・頑張ろう・・・。