・・・少女が孵化する音。

　もう必要ないと思った。
それを得ることはないと、思った。

―だから、全部拒絶した。
―だから、全部拒否した。
―だから、自己を否定した。
―だから、自己を排除した。

　それが最善で、それが一番正しい結果を選んだと思った。
何を選ばないことこそ、誰も傷つけないとそう判断したから・・・。

・・・時は経ち、3週間を超えた。

　・・・頑固で強固を自負していた枢の信念を、壊した人がいた。
毎日毎日…あ、飽きもせず、繰り返される会話。200時間強。
・・・な、何をしてたんだろう・・・（遠い目。

　・・・思い出すと、他愛無い物やどうしょもない事、過去や後悔・・・自傷に自己否定の末、笑えなくなった事・・・本当に色々話したと思う。
・・・話しただけじゃないけど・・・色々迷惑かけて、心配させて・・・ろ、ろくな事…してない（凹。
何度も、嫌われようとしたのに・・・それでも、馬鹿みたいに・・・真っ直ぐに、火傷しそうな位、熱くって・・・っ・・・・・・本当に、・・・っ・・・・（呟。

　・・・勝負は、枢の負けになった。
これは、もう出てしまった結果。
・・・誰を傷つけても、もう変わらない事実。変えれない事実。
何も選ばないと言う己の誓いを破った。
これから・・・もっと、誰かを傷つけていくんだと思う。
それが嫌で、只、自己の存在を否定し、排除する事だけを望み、誰かに必要とされることも、笑うことも拒絶していた。
それだけを常に念頭に置き、そのように行動していた。

　・・・でも、今は違う。
確固たる信念に包まれた『誓約』と言う殻を壊した人がいる。
・・・傍に居てくれると言った。
・・・間違ったら殴ってでも止めると言った。
・・・支えるだけじゃなく、支えたいと言ってくれた。
・・・だから、一緒に変わって行こうと約束した。

・・・枢は、変わっていけるかな。
―――否。
変わって行こう、少しでも・・・。
あの方に見劣りのしない物なる為に。

・・・封鎖された己の世界が広がる。
色褪せた景色が少しだけ、色を取り戻す。

・・・赤い赤い色を帯びて・・・