・・・重み。

　・・・先の東北の土蜘蛛とリリスと狂人の戦争が、終わった。

　同族を倒すことに、躊躇いがないか・・・と、問われれば・・・きっと答えは『いいえ』。
・・・世界結界も、罪のない人間も、関係ない。全く、興味がない。
同じ土蜘蛛だから、出来ることなら手を掛けたいとは・・・思わない。
・・・枢の覚醒が、ほんの僅かでもずれていたなら・・・枢は確実に、向こう側のモノだったから・・・。
　―でも、あの方達に被害があるなら・・・答えは別だ。
枢の持ちえる全てをもって、全力で倒す。
・・・ただ、それだけ。

―護ると決めた。
その為の障害なら、例え同族でも『敵』。

　戦争には、対立、主張、それぞれの失くしたくないモノの張り合い。
その戦いの数だけ、理由なんか幾らでも存在する。
・・・そう、彼女は言った。
　酷く共感を覚えた。
だから、枢はあの戦いで銀誓館と戦ったのだと・・・。

　・・・では、身近な死に意味なんかあるのだろうか？（傾。
　枢にとってのかつて幸福な死は、『土蜘蛛様を守護し、その役目に殉じること』。
―今は、誓約の元にしない。出来ない。それは望まれない。

　この戦いで、沢山の死があった。
枢の所属する結社の土蜘蛛様もその中に居た。
　死に意味はあるかと聞かれれば、その者にしか解らない。
・・・理由は、憶測でしか知る術がない。
例え言われても、己以外の他者に同じ想いが伝わるかなんて・・・死んだ者は理解できない。
亡くなった者を思い、それぞれの記憶に残るのが死かもしれない。
でも、時間が経てば・・・風化するように無くなる。
ただ、失う痛みを知ってる者や、その者に一定以上の好意を持ってた者には傷になり、何時までも印のように残る。
・・・本当に伝えたい者に伝わるかなんて・・・そんなの観測出来ない。
きっと興味のない者とっての死なんか、なんの意味も持たない。
ただの自己満足。
そして、傷を残すだけ・・・。

　冷たく思われようと、この枢の考えが間違ってるとは思わない。
己がしたかった幸福な死は、確実にこれだから。
・・・ただの自己満足。
残された者のことなど考えず、己の信念の儘に進む。
ただの我侭でしかない。
　それ否定する要素なんか何処にもない。
結局、誰も止められなかったのだから。
踏み止まれる言葉も、者も存在しなかったのだから。

己の信念と他者への想い。
天秤に掛け、どちらが重たいのか
・・・ただ、それだけ・・・