・・・失態。

　・・・枢は、己が望まないことを・・・何よりも嫌な癖に・・・それを、よりにもよって、土蜘蛛様にしてしまった。

　…個と括りの矛盾。
　枢が散々教え込まれたことは・・・より多くの土蜘蛛様守れと言うをこと。
駄目だと教わって・・・解ってるはずなのに、それを当たり前と認識する。

全ての土蜘蛛様を、尊敬すべし。畏怖し。忠実にいるべし。

・・・鬩ぎ合う狭間で何かが傷む・・・

　・・・ぎりぎりと胸の奥が音を立てて軋む。
優劣をつけてはいけない筈の土蜘蛛様に優劣を付けて行く己が一番憎い。つけない己が憎い。

　・・・これ以上なく己を否定して、無くなる事を望むも、身体中に見えない糸が絡まって雁字搦めになって・・・それすら出来ない。

　答えは出ている。
でも、枢は納得が出来ない。
でも、納得するしかない。
でも、出来ない。
でも、・・・

・・・冷たい水が肢体を濡らしていく・・・
ナイフで手首を躊躇いなく切る。
・・・切り落ちない程度に深く浅く・・・
流れ落ちる真紅の液体を見つめ、次にくる痛みを待つ。
・・・宿主を意思を無視して蟲が集まる・・・
今だけは、存在を許される気がした。

・・・痛みだけが、贖罪。